パトリシア・カミンスキー/FESディレクター






ピンクモンキーフラワー( 学名/Mimulus lewisii )
  ピンクモンキーフラワーは、フラワーエッセンスの中でもじつに傑出したレメディであることがフラワーエッセンスを使用している人々の間で認識されています。この花は、インディアンペイントブラッシュ、ペンステモン、モンキーフラワーなどを含むスナップドラゴンの仲間であるゴマノハグサ科の植物です。もともとミムラスを代表とするモンキーフラワーの種類に属する花のヒーリング効果は、多くの人々の注目を浴びていました。

  バッチ博士が開発した黄色のミムラス(ミムラスダッタス)のおかげで、一般的な恐れや神経症の症状を呈する行動に関する恐れの治療には、ミムラスが一番であることは皆さんもよくご存じのことでしょう。黄色のミムラスは実際には、北西部アメリカの野生の植物であり、湿地帯や小川のほとり、小高い森林地帯に続く谷あいの湿っぽい場所に群生しています。



●Mimulus/ミムラス


●Scarlet Monkeyflower/
  スカーレットモンキーフラワー


●Sticky Monkeyflower/
  スティッキーモンキーフラワー
 スカーレットモンキーフラワーおよびスティッキーモンキーフラワー(ミムラス・アウランティアカス)の二種類のエッセンスを私たちは次々と開発しました。燃えるような紅色のスカーレットモンキーフラワーの主題は恐れなのですが、どちらかといえば人間の性的な表現により深く関わっているといえます。私たちの魂は、親密さと人間的な温かさに対する大いなる恐れを表出してみせるのです。(しばしば幼少時のトラウマに起因する恐れです。)そして、その特質は品位の低い性的行動、もしくは不適切で人間の温かさに欠ける性的行動へとその人を駆り立てます。トラウマに起因した恐れは、人間愛の表現に使うべき肉体の性的な表現すら否定してしまいます。

  私がピンクモンキーフラワーに強くひかれたのは14年前(注:この記事が書かれたのは1998年です。)・・・性的機能障害に悩んでいたあるクライアントの治療に当たっていたときのことです。彼の悩みは二十代には一時鳴りを潜めていたのですが、三十代になると再び彼を苦しめはじめました。その男性は、思いつくままに大勢のホリスティックの治療師や医者に助けを求めました。ところがこれといった成果を得ることは出来ませんでした。

  多感な思春期を迎えていたころ、彼にとってはトラウマとなるような出来事が起こりました。私たちはピンクモンキーフラワーをはじめとする三つのレメディ(スティッキーモンキーフラワー、スカーレットモンキーフラワー)を彼の治療に使いました。特に後者の二つのモンキーフラワーは彼の上に起こったトラウマ形成の原因となったエピソード・・・思春期という大切な時期、伯父にレイプされたという難しい境遇を探求するための主要なエッセンスとして使われたのでした。この特異な体験がもたらした信じがたい痛みと怒りの感情を、彼はことばとして表しはじめました。そしてこれらの生理上の機能障害には著しい治療効果が現れ始めました。
  この快復は彼を喜ばせました。その治療は今まで受けたどの治療にもない素晴らしい効果をあげたのです。しかし、特定なストレス状態のもとでその快復が一時的に逆戻りする事態が起こりました。その時私は、彼の魂がまだ十分に癒されていないことを察知していました。彼は名状しがたいほど辛い魂レベルの痛みを抱いていました。それは感情面でのリスクを負うこと、とくに他人に対して心を開けないこと、他の人々を大事にできないという点でした。

 約二ヶ月後のこと。フラワーエッセンスを作るために山に登っているときのことです。私はそこでピンクモンキーフラワーの姿を初めて見たのです。(もっとも植物の一種としてこの花を見たことはあったのですが。)その時、その植物が悩めるクライアントのための一条の光であるように思えたのです。クライアントの魂の痛みの本質こそ「羞恥心」という言葉であるとひらめいたのでした。事実その花は、「その種の悩みを癒すのはこの私・・・」とでもいうように光り輝いて私の目に飛び込んできたのでした。
  自然保護地区の清らかな山間の小川に沿って花は咲いていました。それはじつに傷つきやすさを思わせる繊細なピンク色をしていました。その優しい風情にも関わらず、内側には圧倒するような力強さをも秘めた花でした。

  私はクライアントに、このエッセンスだけを基本レメディとして使用してもよいかを尋ねました。実際、この時期、彼に起きた変化は実に劇的でした。彼が涙を流したのです。彼にとって、涙を流して泣くという感情の表現はそれまでまったく皆無でしたから。彼はカウンセリング・セッションの最中に泣きました。また、妻や家族からのフィードバックを受けたときにも涙で感情を表現したのです。この治療期間中のことです。彼はとても意味深い夢を見たとレポートに記しました。その夢は彼の魂がまさに体験している深遠なひらきを暗示している夢でした。夢の中で彼は、心臓の外科手術を受けていたのです。彼のからだは病院ではなく教会に運ばれ、医師の変わりに彼に手術をしていたのは女性の牧師でした。

  もっとも私が心を打たれたのは、彼の激しい変化でした。治療が進むにつれて彼の神経質で気むずかしい表情は消え、やさしい透明感さえ感じる面立ちに変わってゆきました。以前のどんよりとしてまるで仮面のように生気のない彼の目に穏やかな光が宿るようになりました。私には彼の目の本質が変わったように思えました。彼は、いったん肉体を離れた魂がふたたびこの世に戻ってきたときのような、感動に満ちた表情を取り戻したのです。

  この男性の性的機能障害は、最も深いレベルでのメタファーで見れば、人間同士の触れあい、つまりお互いが手で触れたり、触れてもらったりするという当たり前のことができない苦しさの表現だったのです。辛い苦しさは恐ろしい暴力の仮面をかぶり、彼の核心の自己を覆っていたのです。ティーンエイジャーのころに信頼していた親類のひとりに性的な辱めをうけた結果です。ピンクモンキーフラワーは、この男性に本物の感情をもち、まわりと触れあう豊かな感性を取り戻させました。

  羞恥心を基盤とした行動学は、過去数年にわたりしだいにセラピストとクライアントの間では、その定義づけや学術講演などで知られるようになりました。ジョン・ブラッドショウが彼の優れた著書"The Shame That Binds You"「あなたを縛る羞恥心」の中で、適切な境界線や制限ラインをつくる健康的な羞恥心と、反対に不健康な羞恥心との違いについて区別した記述があります。彼は、不健康な羞恥心は予期しない体験によって引き起こされ、心を苛む心因的なものであると書いています。それはあたかも主として心の奥底の深い傷のようなものであると・・・。その傷は自己自身から他人を分離してしまうものです。不健康な羞恥心は、私たち自身の心とはまったく異質のものです。この羞恥心が包み隠しをするのです。


 ピンクモンキーフラワーは、不健康な羞恥心を取り除く主要なレメディです。私たちは現在、このエッセンスに関するケースレポートを多くのプラクティショナーから寄せられており、その結果に確信をもつに至りました。ピンクモンキーフラワーを含む症例の研究は、しばしばごく幼少の頃のトラウマ、肉体の酷使、または性の乱用など一般的なテーマをも含んでいます。このようにして人々は大きな感情的な充血状態になります。つまり、感情的なリスクを負うことや、ことばに出してその感情を表現することを難しくしています。彼らはいつも包み隠したり、その感情を普通の人が羞恥心を表す以上に意味の深いやり方で隠してみたり、感情を撤退させるのです。これらの問題をかかえた多くの人々は、個人が耐えられないほどの痛みや感情の繊細さを無感覚にする方法として物事に耽溺したり、中毒的になったりすることで安らぎを感じるのです。

  ピンクモンキーフラワーが重症な心の病を癒すというゴールを目指している一方、多くのカウンセラーは一般的な治療にもこのエッセンスを用いています。彼らはカウンセリングのごく初期の段階にこのエッセンスが効果を発揮すること、また、フラワーエッセンス療法におけるヒーリングには特にその効果は優れていることを報告しています。あらゆる治療の効果をあげるのには、クライアントがカウンセラーを信頼し、その感情的な痛みをあらわにして病を乗り越える力にかかっているのです。

  このようにして私たちは、ミムラスや他の種類のエッセンスが人間の持つとてつもない恐れの処置をする治療法を観察することができます。事実、羞恥心がベースになった行動は、他の人たちにその傷みと傷つきやすさを素直に表現することによって立ち直るものなのです。私たちが人間愛を体験するという能力は、他人との関わり方いかんにかかっています。魂が暴力で深く傷ついていたりすると、魂自体が自身を守ったり癒す力を引き寄せます。しかし、もし人間が他人に対する愛を体験すると、人は傷つきやすさのリスクを負うことも厭わないのです。ピンクモンキーフラワーはその花の色、やさしいピンクの花弁と中央の光を散らしたような黄色が示すとおり、とくにハートのレベルでよく作用します。この花のエッセンスは、温かさと愛に傷ついた魂を開くための貴重な贈り物です。


*この記事は、1998年発行のフラワーエッセンス普及協会の
  ニュースレターに掲載されました。許可なく無断転載を禁止じます。
  写真、Flower Essence Society